妨害は “を”
野球のルールには“妨害”というルールがあります。
原則、故意(わざと)であるないを問わず “ 妨害 ” という名称でルールは適用されます。
打撃妨害
守備妨害
走塁妨害
これだけだと、
どちらが加害者でどちらが被害者なのか一瞬判りにくいですね。
妨害の前に“ を ”をつけると、判りやすくなるかと思います。
打撃“を”妨害した
守備“を”妨害した
走塁“を”妨害した
同じ妨害という文字を使っていますが、判定がそれぞれ違います。
また。妨害発生時の処置方法も異なります
打撃妨害は、成り行きでプレイがひと段落してから、判定をします。
守備妨害は、原則、即ボールデッド(例外もあります)
走塁妨害は、即ボールデッドと成り行きの2つのパターンがあります。
アメリカでは、
打撃妨害、守備妨害を一括りにインターフェア (interference)
走塁妨害をオブストラクション (obstruction)としております。
なので、日本の野球規則も、それにならった順番になっています。
(だから見づらいとも言う)
それぞれを例をあげて解説いたします。今回は打撃妨害です。
【打撃妨害(インターフェア)】
被害者: 打者
加害者: 守備側(ほとんどが捕手)
一番多いパターン:
捕手が打者のバットに触れる。
発生後の処置
プレイがひと段落してからの判定。
プレイが続かなかった場合
ボールデッドとなり、打者に1塁が与えられる。
プレイが続いた場合(打撃妨害されたにもかかわらず、打者が投球を打った場合)
そのプレイをひと段落した後に判定をする。
その際、打者が1塁に達し、塁上にいる全ての走者も1個以上の進塁ができたときは、
打撃妨害はなかったものとされる。

出典:野球図鑑【ホームメイト・リサーチ-スポランド】
https://www.homemate-research-baseball.com/useful/10150_baseball/index08.php
【例1】
ノーアウトランナーなし。打撃妨害をされた打者が打った打球が右中間へ。
打者走者は、1塁を回って2塁へ向かうが、返球が良く2塁タッチアウト。
この場合、既に打者走者は、1つの塁を進塁しております。
その為、打撃妨害はなかったこととなります。
このケースの場合、打者走者はアウトとなります。
打撃妨害時の特殊なルール
【監督の選択権】
打撃妨害の判定に関しては、結果として攻撃側にメリットにならない場合があります。
その為、監督の選択権があります。
【例2】
1アウトランナー3塁で、打者が打った打球は、投手前のゴロ。
投手が打者走者にタッチしてアウト。
その間に3塁ランナーはホームイン。
しかし、この時、打撃妨害が発生していた。
この場合、打撃妨害ですので、1アウトランナー1・3塁で再開となるのですが、
打撃妨害がなかった場合は、1点が入り、2アウトランナーなしとなります。
どちらが得なのかは、その状況によって異なります。
その為、どちらを選ぶかの選択権が攻撃側の監督にあります。
【例2の場合の流れ】
審判は、例2の場合、打撃妨害を宣言して、3塁ランナーを戻し、1アウトランナー1・3塁とします。
監督は、その際に打撃妨害を選択しない旨を審判に宣言することで、
打撃妨害がなかったものとして試合が進行します。
注意!
監督の選択権があるのは、打者が1塁に達していない場合です。
【例1】の場合は、そもそもの打撃妨害がないのですから、監督の選択権はありません。
【例2】の実際の動画でみてみましょう。
【打撃妨害】ランナー3塁の場面
https://www.youtube.com/watch?v=L0VVTZat20g
どちらが得なのかは、その状況によって異なります。
その為、この場合、どちらを選ぶかの選択権が攻撃側の監督にあります。
(この動画の54秒あたりから、監督が選択しています)
【スクイズ・盗塁での打撃妨害】
これは例で説明します。
【例3】
1アウトランナー3塁。スクイズのサインで3塁ランナーがスタート。
打者がスクイズをしようとした所、捕手のミットに当たってスクイズができなかった。
これがスクイズではない場合は、打者走者が1塁へ進み、3塁ランナーは3塁へ戻ることとなります。
しかし、スクイズの場合、(ホームスチールも含む)、3塁ランナーはホームイン、打者走者は1塁に進むことができます。
記録上は、ボークと打撃妨害になります。(例え投手がボークをしていなくても、ボークとなります)
このルールになった理由は、スクイズの際には捕手がわざと打撃妨害をして、ホームインをさせないことが可能になってしまうからです。
同じ理由で、打撃妨害が行われる前に、走者が盗塁を企てていた場合、その走者の盗塁は有効となります。
【例4】
1アウトランナー2塁。打撃妨害があり、打球はファールになった。この時2塁ランナーは動いていなかった。
この場合打撃妨害で打者は1塁となります。1アウト1・2塁で再開となります。
【例5 ※例4と比較してみよう】
1アウトランナー2塁。打撃妨害があり、打球はファールになった。この時2塁ランナーは盗塁を試みていた
この場合打撃妨害で打者は1塁となります。2塁ランナーは盗塁を試みていたので、3塁へ。1アウト1・3塁で再開となります。
ちなみに【例4】【例5】とも結果ファールとなっていますが、打撃妨害で打者は1塁です。
5.05 打者が走者となる場合
(b)打者は、次の場合走者となり、アウトにされるおそれなく、安全に一塁が与えられる。(ただし、打者が一塁に進んで、これに触れることを条件とする)
(3) 捕手またはその他の野手が、打者を妨害(インターフェア)した場合。
しかし、妨害にもかかわらずプレイが続けられたときには、攻撃側チームの監督は、そのプレイが終わってからただちに、妨害行為に対するペナルティの代わりに、そのプレイを生かす旨を球審に通告することができる。
ただし、妨害にもかかわらず、打者が安打、失策、四球、死球、その他で一塁に達し、しかも他の全走者が少なくとも1個の塁を進んだときは、妨害とは関係なく、プレイは続けられる。
【原注】捕手の妨害が宣告されてもプレイが続けられたときは、そのプレイが終わってからこれを生かしたいと監督が申し出るかもしれないから、球審はそのプレイを継続させる。
打者走者が一塁を空過したり、走者が次塁を空過しても、〔5.06b3付記〕に規定されているように、塁に到達したものとみなされる。
監督がプレイを選ぶ場合の例。
① 1アウト走者三塁、打者が捕手に妨げられながらも外野に飛球を打ち、捕球後三塁 走者が得点した。監督は、打者アウトで得点を記録するのと、走者三塁、一塁(打者 が打撃妨害により出塁)とのいずれを選んでもよい。
② 0アウト走者二塁、打者は捕手に妨げられながらもバントして走者を三塁に進め、 自らは一塁でアウトになった監督は、0アウト走者二塁、一塁とするよりも、走者三塁で1アウトとなる方を選んでもよい。
三塁走者が盗塁またはスクイズプレイにより得点しようとした場合のペナルティは、 6.01(g)に規定されている。
投手が投球する前に、捕手が打者を妨害した場合、本項でいう打者に対する妨害とは考えられるべきではない。このような場合には、審判員は〝タイム〟を宣告して〝 出発点〟からやり直させる。
【注1】監督がプレイを生かす旨を球審に通告するにあたっては、プレイが終わったら、 ただちに行なわなければならない。なお、いったん通告したら、これを取り消すこ とはできない。
【注2】監督がペナルティの適用を望んだ場合、次のとおり解釈できる。
捕手(または他の野手)が打者を妨害した場合、打者には一塁が与えられる。三塁走者が盗塁またはスクイズプレイによって得点しようとしたときに、この妨害があ った場合にはボールデッドとし、三塁走者の得点を認め、打者には一塁が与えられる。
三塁走者が盗塁またはスクイズプレイで得点しようとしていなかったときに、捕手が打者を妨害した場合にはボールデッドとし、打者に一塁が与えられ、そのために塁を明け渡すことになった走者は進塁する盗塁を企てていなかった走者と塁を明 け渡さなくてもよい走者とは、妨害発生の瞬間に占有していた塁にとめおかれる。
6.01(g) スクイズプレイまたは本盗の妨害
三塁走者が、スクイズプレイまたは盗塁によって得点しようと試みた場合、捕手またはその他の野手がボールを持たないで、本塁の上またはその前方に出るか、あるいは打者または打者のバットに触れたときには、投手にボークを課して、打者はインターフェアによって一塁が与えられる。この際はボールデッドとなる。
【注1】捕手がボールを持たないで本塁の上またはその前方に出るか、あるいは打者または打者のバットに触れた場合は、すべて捕手のインターフェアとなる。
特に、捕手がボールを持たないで本塁の上またはその前方に出た場合には、打者がバッタースボックス内にいたかどうか、あるいは打とうとしたかどうかには関係なく、捕手のインターフェアとなる。また、その他の野手の妨害というのは、たとえば、一塁手などが著しく前進して、投手の投球を本塁通過前にカットしてスクイズプレイを妨げる行為などを指す。
【注2】すべての走者は、盗塁行為の有無に関係なく、ボークによって1個の塁が与えられる。
【注3】本項は、投手の投球が正規、不正規にかかわらず適用される。
【注4】投手が投手板を正規に外して走者を刺そうと送球したときには、捕手が本塁上またはその前方に出ることは、正規なプレイであって、打者がこの送球を打てば、かえって打者は守備妨害として処置される。