中学生アスリートには知っておいて欲しい “マタイ効果” について
この話をしてきましたが、どうしても努力では越えられない壁があります。
そのうちのひとつがマタイ効果です。
マタイ効果は、中学生・高校生のアスリートには、以前紹介したクラムジーとともに知っておいて欲しい現象です。

今回はマタイ効果についてです。
【マタイ効果とは】
マタイ効果は、科学社会学の創始者、ロバート・K・マートンが唱えた現象のことです。
マートンは、研究者は、最初は平等な土俵に立って競争していたとしても、いったん一人がよい研究成果を出すと、その研究者には補助金やよい研究設備が与えられたりして、よりよい成果を出せるような仕組みになっている。
そのため、著名な研究者はますます功績を上げるし、著名でない研究者はずっと功績を上げられない。
この現象を、上記『マタイによる福音書弟13章12節』をなぞらえて“マタイ効果”と命名しました。
【スポーツにおけるマタイ効果】
【カナダ:アイスホッケー選手の誕生月】

カナダの心理学者であるロジャー・バーンズリー。
この日は知り合いの子が出場するアイスホッケーのメモリアルカップ決勝戦の観戦にきていたそうです。
メモリアルカップとは、カナダにおける17歳から19歳の選手が所属する最高峰リーグ、メジャージュニアAリーグの決勝でした。
大会のパンフレットを見ていた彼の妻がいった一言
「みんな1月から3月の生まれなんだ~。」
この言葉に興味をもったロジャーが、カナダ出身のプロアイスホッケー選手を調べてみたところ・・・
40%が1~3月生まれ、
30%が4~6月生まれ、
20%が7~9月生まれ、
10%が10~12月生まれ
という結果だったそうです。
理由を調べてみると非常に明確で、カナダのアイスホッケーでは、同じ年齢の少年を集めてクラスをつくる場合、年齢を区切る期日を「1月1日」に設定しているからです。
つまり、1月生まれと12月生まれでは、約1年間違う訳です。
この結果に興味を持ったロジャーは、他の競技も調べてみてみると・・
カナダの野球は、8/1~7/31で年齢を区切っているので、8月生まれのメジャーリーガーが多いそうです。
イングランドでは、9/1~8/31で年齢を区切っているので、9月~11月生まれのプレミアリーグ選手が多いそうです。
【日本の場合】
では、日本ではどうでしょうか?
若年期のスポーツのカテゴリは、学年で区切られるパターンがほとんどです。
高校野球、高校サッカーなんかは典型的ですよね。
4/2~翌4/1生まれがひとつのカテゴリーになっているパターンが多いです。
その結果、プロ野球選手、Jリーガーとも、プロになる選手は4月~6月生まれが多いのです。

出典:2011年4月8日 NIKKEI STYLE 「プロ野球選手やJリーガー、何月生まれが多い?」
https://style.nikkei.com/article/DGXBZO26261010W1A400C1000000
少年期での1年は大きな違いです。体と精神の成長が早く、有利なスタートを切った子どもは、メンバーに選ばれやすく、選ばれると質のよい指導を受けて、さらにレベルの高い仲間と競い合う機会にも恵まれます。
恵まれなかった子どもは、恵まれた子どもとの差が拡がることで、自然と早い段階で淘汰して(されて)いく為、一流(この場合はプロ選手)になる誕生月が偏るのです。
最初、同じ年齢の仲間よりほんのちょっとだけ上手だった。
そして小さな差が好機を招き、その差が少し広がる。さらに、その有利な立場が次の好機を招く。
こうして、最初の小さな差がますます大きくなり、延々と広がって、少年は一流になる。
この少年はもともと一流だったわけではない。ほんのちょっとだけうまかっただけだ。
これがスポーツにおけるマタイ効果です。(相対年齢効果ともいいます)
これはどうしようもない現実です。
いまさら誕生日を変える訳にはいきませんよね。
仮に変えられることができでも、今では遅いですし・・・・
しかし!!
自分の誕生月を悲観することはありません。
このマタイ効果ですが、永遠と続くのでしょうか?
残念ながら、これを調べた調査はみつかりませんでした。
その為、私が個人的に調べてみました。
【2019年3/1現在のプロ野球選手の調査】
調査対象:2019年3月1日現在でプロ野球支配下登録をしているセリーグの選手
対象理由:本当は、全選手行いたかったのですが、面倒なので(笑)
調査方法:各球団のHPの選手名鑑より、経歴と誕生月を抜き出す。
結果:
4月~6月生まれ 30.41%
7月~9月生まれ 28.22%
10月~12月生まれ 21.92%
1月~3月生まれ 19.45%
上記出典としてのリンク先とほぼ同じ結果となりました。やはり生まれ月の影響は大きいと言えます。
でも、プロ野球選手になった時期は様々です。
大体18歳~25歳くらいまででしょうか。
経歴として大別すると
高卒→プロ
高卒→社会人→プロ
高卒→大卒→プロ
高卒→大卒→社会人→プロ
の4通り。独立リーグを経てプロになった選手も最近は見かけられます。
ここで大学卒以上の経歴のある選手に絞り誕生月を調べてみました。
大卒以上としたのは、社会人は選ばれないと入れませんが、大学は野球を自ら選べるからです。
調査対象:上記の中から、大卒→プロ、大卒→社会人(独立リーグ)→プロ
結果:
4月~6月生まれ 24.59%
7月~9月生まれ 26.23%
10月~12月生まれ 25.14%
1月~3月生まれ 24.04%
ね。誕生月におけるマタイ効果はなくなったでしょ。
人間は、約20年かけて大人になります。
大人になれば、誕生月は関係ないってこと判るよね。
もしも今、差がついていると感じていても、あきらめる必要はありません。
勝負は、今の時期ではないことを理解してください。
むしろ20歳になる前にあきらめるともったいないですよね。
あきらめたら、そこで試合終了ですよ・・・?
神奈川県立湘北高等学校 バスケットボール部 監督 安西光義
出典『スラムダンク』井上雄彦
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