一流の練習方法④ ~続:未来を読む~
(良いに越したことはないけどね。)
経験というデータベースから流れを検索することが瞬時にできることが“未来を読む能力”であり、
この能力は誰でも持っていることを紹介しました。
実は、君たちはこの能力を使って野球をしています。
数字でみてみましょうか。
【未来を読んで打っている】

18.44mから、120km/hで投げられたボール。
投手はプレートより前で投球しますので、ホームベースまで17mと仮定します。
ホームへ届くまでの時間は、0.51秒です。
これをみんなは打っている訳ですが、もう少し細かく見ましょう。
人間には、反応速度があります。
非鍛錬者の全身反応時間は0.365秒。それに対して一流選手は0.324秒だそうです。
【参考】
Number Web「剛速球を科学する。人間は何キロの球まで打てる?」
http://number.bunshun.jp/articles/-/12200
間をとって、0.35秒としましょうか。
バットを振るには、この時間は必要となります。
なので、残り0.16秒(0.51秒-0.35秒)が判断時間となります。
・どのコースにどんな球が来るのかの判断。
・バットを振るのか振らないのかの判断
・(振るのであれば)どこへバットを出すのかの判断
この判断を行った後、動作を行っている(行わない場合もあり)訳です。
勿論、球速が早くなればなる程、これらの判断時間は短くなります。
判断時間0.16秒。ストップウォッチを持っているのであれば、0.16秒を測ってみてください。
かなり速いことが判ります。
このように数字でみると、「え?できっこない」と思うかもしれませんが、
実際に打っているということは、“できている”ってことなんだよね。
あとは、いかにこの能力を伸ばしていくかということだね。
守備でも、ゴロの転がり方を予測してグラブを出し、走者の動きを予測して送球を行います。
外野手の技術である“目切り”は、典型的な“未来を読む”ですよね。
野球という競技において、“未来を読む”ということが、“野球が上手くなる”ということだよね。
【エキスパートエラーについて】
では、視点を変えましょう。
先回、少し触れましたが、一流が“未来を読んでいるのは、蓄積された経験(データベース)から検索していることを
お話しました。
では、デタラメなチェス盤やランダムな文字のように、データベースにないものであれば、一流を倒せるのでしょうか?
【レジェンド選手vs女子ソフトボール日本代表】
現役時代、主力打者として君臨し、140km/hを超える球を何度も打ち返してきたレジェンド選手。
この選手に1打席勝負をするのは、現役女子ソフトボール日本代表。

バラエティー番組で良く見ませんか?。
常に結果は、レジェンド選手がバットをくるくる空振りしています。
その理由は、野球で蓄積された球筋とは異なるボールが来るから、予測が当たらない。
つまり、未来が読めないからです。
【テニス VS 卓球】


こちらは雑誌の企画ですが、元卓球オリンピック代表で現コラムニストのマシュー・サイドが、テニスのレジェンド選手のサーブを受ける企画を行いました。
卓球は、約0.2秒弱で自陣のコートに来る球技に対して、テニスのサーブは、約0.4秒後に自陣のコートに来る球技。
打ち返せることはできなくても、ラケットに当たることはできるでしょう。と。
実際は、ラケットに当てるどころか、微動だにできませんでした。
【一流はどこを見ているのか?】
「なぜ反応できない?」マシューは、疑問に思い、実際にこのサーブを常に打ち返している一流選手のレシーブについて調べてみました。
「一体サーブの時どこを見ているのか?」
マシューは、アチコチと目線が定まらないのに対し、一流選手は、相手がサーブのフォームに入った瞬間、腰や胴の動きを見ているそうです。それらの視覚的情報かを経験という膨大なデータベースと照合し、最もありえるサーブのコースを弾き出すことで、
240km/h超のサーブを打ち返している訳です。
全体像を把握して初めて、プレーヤーの配置状況や相手のかすかな体の動きから重要情報を入手し、次に起こることの予測が可能となる。これがスポーツにおける最重要事項だ
【どうしたら未来が読めるか?】
今まで紹介した一流選手が持っている“未来を読む”ちから。
一流選手は、経験というデータベースから、未来を予測して準備していることが判ったよね。
では、どのようにしたら未来が読めるようになるのでしょう?
現時点では画期的な方法は確立されていないと思っています。
(確立されていたら、みんな打ってるよね)
みんなに提供できるのはヒントだけです。
みんなが確立をしてくださいね。
【ヒント:3種類の予測】
予測は、3種類あるといわれています。
・知覚的予測
視覚的にボールがどのコースへ来るのかを、投手が投げる時、投げた直後に予測します。
スピード、回転(変化)等も予測します。
・技術的予測
相手の投手がどのようなボールを投げるのか? 相手の技術面から予測します。
相手の投手の持ち球がストレート、カーブ、スライダーだけと判っている場合、フォークを予測することはないよね。
投手のクセを見抜くことも、技術的予測となります。
捕手の配球パターンからも予測は可能です。
・戦術的予測
自分の前の打者の状況や、自分の前の打席での結果であったり、自分の打席の投球状況によって、次に投げるボールの予測をします。
この3つの予測がどのように使われるか?時系列的にしてみました。
野球は勿論、サッカー、バスケ、テニス、バレー、卓球にも、剣道、柔道等の対戦型格闘技も以下があてはまります。
【ヒント:対戦型球技に共通するスキル(時系列)】
① 相手の過去の情報からやることを予測(戦術的予測)
↓
② 相手の動作を見て打つ前に球種やコースを予測(技術的予測)
↓
③ ボールを観て状況判断し、対応動作を決定(知覚的予測)
↓
④ 動作の実行
↓
⑤ これら一連の結果を次回のデータとして蓄積する(①へ戻る)
実際にはどうでしょうか?
③と④しかやっていない人が大半ではないでしょうか?
自主トレや練習で行っている“素振り”。④だけの練習になっていませんでしょうか?
特に・・・・練習でも、試合でも⑤をしていますか?
蓄積をしないと、何度も同じ失敗を繰り返しますよ。
【ヒント:見取り稽古】
剣道、柔道、弓道などの武道、日本の伝統的芸術である華道や茶道、書道等
どれも“道”という言葉がつきます。
この“道”を極める為に必要な練習には、必ず“見取り稽古”なるものがあります。

見取り稽古とは、一般的には動きや技を見て学ぶこととされています。
3種類の予測のうち、知覚的予測(③)は、バッターボックスに立たないとできないけど、
技術的予測(②)、戦術的予測(①)は、“人の野球を見ること”でも蓄積することができるよね。
未来を予測する為に必要なスキルとして“空間認識能力”という説があります。
自分自身を全ての方向からみることができる能力です。
この能力は、目的を持って見ることで伸ばせることができるといわれています。
目的を持って、意識を集中させて、野球を見て、予測をしてみよう。
また、見取り稽古であれば、予測が間違えたって問題ないよね?
どんどん予測して、間違えて、修正して、精度の高い予測にしていこう。
【ヒント:イチローの言葉】
自分のやっていることは、理由があることでなくてはいけないと思っている。僕は、自分の行動の意味を必ず説明できる自信があります。
どうやってヒットを打ったのかが問題です。たまたま出たヒットでは、なにも得られません。
ぼくは、1試合、1試合、ふりかえっています。まとめてふりかえることはしません。
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