睡眠は必要なトレーニングだ!

イチロー 「夢をつかむ イチロー262のメッセージ」ぴあ刊よりもっとも気をつけていることは寝ることです。
一昔前は、寝る間を惜しんで練習(自主トレ)が美徳とされていましたが、現在の考え方は、睡眠もトレーニングのひとつであることが主流となっています。
昔 : 上手くなるには練習あるのみ(寝る間を惜しんで練習する)
今 : 上手くなるには練習+睡眠
この考え方は、トップアスリートの方が顕著です。

現在バスケットボール界の“ King ” レブロン・ジェームス、テニスの“ 絶対王者 ” ロジャー・フェデラーは、ともに平均睡眠時間は12時間。
陸上“ 人類最速の男 ” ウサイン・ボルトは平均10時間。
イチロー(野球)、クリスチャーノ・ロナウド(サッカー)は最低8時間の睡眠は確保するそうです。
サッカーの“銀河系軍団”と呼ばれるレアル・マドリードには、睡眠コーチが所属し、マンチェスター・ユナイテッドには、一流ホテル顔負けの仮眠室があります。
今年(2018年)中日ドラフト1位指名の大阪桐蔭高校 根尾昂選手も、睡眠時間にこだわりがあるそうです。
両親が明かす大阪桐蔭・根尾の素顔と秘話(スポーツ報知 2018年10月31日)
https://www.hochi.co.jp/baseball/column/20181030-OHT1T50183.html
日本オリンピック委員会がアスリート(オリンピック候補)を対象に睡眠時間を調べた所、平均睡眠時間は、8時間4分でした。
日本人の平均睡眠時間は7時間14分(NHK調べ)、
日本人中学生の平均睡眠時間は、7時間30分(ベネッセ調べ)
だそうで、中学生でもアスリートに比べ約30分の違いがあります。
たかが30分と思ってはいけません。不足の睡眠時間は、借金のように積み重なり、心身に影響を及ぼす恐れがあります。
このことを“睡眠負債”と呼びます。
昨年(2017年)の流行語大賞のトップテンにも入っていますので、言葉だけは知っている人もいると思います。
この睡眠負債は、“寝だめ”では解消できないことも判っております。
身長を伸ばす為には、睡眠の質(最初の90分)が必要であることは、先回述べました。
成長期のアスリートの場合は、質も量も必要です。
今回と次回の2回に分け、睡眠とスポーツパフォーマンスについて、様々な調査結果を紹介します。
しっかり睡眠をとらないと、パフォーマンスが下がる。
①テニス選手のサーブ
1日5時間以下の睡眠であると、ファーストサーブの成功率が平常時より25%下がる。
②1日寝ない = 脳震盪(のうしんとう)と同じ

1日寝ていない学生アスリートに対し、アイトラッキング・テストを実施
アイトラッキング・テストとは、VR装置をつけ、画面上に動く光の点を目で追うテストで、
どれだけ正確に追えているかを通じて、脳の機能を計測することができるテストです。
1日(26時間)寝ていないアスリートにこのテストを実施した所、脳震盪(のうしんとう)を起こしている人の
アイトラッキング・テスト結果と似たパターンがでたそうです。
つまり徹夜して野球をした時は、脳震盪状態で野球をしていることと同じとなります。
危なすぎますね。
③ツイッターとNBA選手

2009~10年シーズンから2015~16年シーズンまでの7年間にわたりNBA選手112人を対象に行った調査では、
深夜に投稿したツイッターと翌日の試合での成績に関する分析を行った。
その結果、前夜に投稿をしていた場合、その選手には試合中のパフォーマンスが振るわなくなり、チームも負けることが多かった。
試合前日の午後11時から翌日の午前7時までの間のツイートしていた場合、試合では得点が平均1ポイント減り、
フィールドゴールは同 1.7%減少。アシスト、リバウンド、スティールのいずれも減少していた。
しっかり睡眠をとると、パフォーマンスがあがる!!
①スタンフォード大学バスケットボール部での調査

被験者は11人。実験では普段通りの睡眠習慣を2~4週間続けさせたのちに、
最低でも夜10時間はベッドに入る生活を5~7週間続けさせたとのこと。結果として、
スプリントのタイムが16.2 ± 0.61秒から15.5 ± 0.54秒へと約0.7秒向上
フリースローの成功率が9%増加
スリーポイントシュートの成功率が9.2%増加
気分プロフィール検査(Profile of Mood States)の点数で、活気が向上し、疲労の減少を自覚したそうです。
この実験は、睡眠時間を変えただけで、普段の生活(勿論練習内容も)は変えておりません。
バスケ初心者であれば、練習によってこれぐらいの変化はあるかもしれません。
しかし彼らは大学生とはいえ、実験前段階でも、フリースローは10本中8本の成功率、スリーポイントシュートも15本中10本の成功率を誇るセミプロレベルの選手達です。
1人であれば、可能性はありますが、全員のパフォーマンスが上がったのは、睡眠時間によるものであると言えます。
もうひとつ睡眠の影響であると言える結果があります。
この40日間の実験が終わり、睡眠時間を元に戻した所、被験者全員の記録は、実験前の数字に戻ったそうです。
詳細結果↓
http://www.waseda.jp/prj-female-ath/conditioning/care/sleep/
②スタンフォード大学水泳部での調査

水泳部5名に対し、毎日の睡眠時間を10時間とらせた。
5名のうち1名は途中でドロップアウトしてしまったが、
実験期間中に4名中3名に自己ベストのタイムを更新した。
③アンドレ・イグダーラ選手

現在、NBAシーズン3連覇を狙うゴールデン・ステートウォーリアーズの“シックスマン”ことアンドレ・イグダーラ選手(2015-16シーズン ファイナルMVP選手)
が睡眠とパフォーマンス実験に参加しています。
睡眠時間を8時間を基準として、1シーズンのパフォーマンスを調べた結果、
8時間以上睡眠をとった時
・プレー時間は12%上昇
・1分あたりのポイントは29%上昇
・スリーポイントシュートの確率は2%上昇
・フリースローの確率は9%上昇
8時間以下の睡眠の場合
ターンオーバーは37%上昇
ファール数は45%増加
平均睡眠時間は最低8時間(できれば10時間)はとりたいですね。
《参考文献》
『コーチング・クリニック2010年10月号』(ベースボール・マガジン社)
アスリートの「睡眠」と「生体リズム管理」内田直教授
『スタンフォード式 最高の睡眠』 西野精治(サンマーク出版)
『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』ショーン・ スティーブンソン(ダイヤモンド社)
『睡眠こそ最強の解決策である』マシュー・ウォーカー(SBクリエイティブ)
Forbes Japan 『一流アスリートは半日眠る 睡眠不足は運動能力を下げるのか』
https://forbesjapan.com/articles/detail/16632
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